プログラム例 1: Hello World

このページでは、次の内容について説明します。

• 単純な「Hello World」プログラムの IDL
• オブジェクトを作成し、それをネーミングコンテキストに登録する一時サーバ
• 既知のオブジェクト名のオブジェクト参照をネーミングコンテキストから探し、そのオブジェクトを呼び出すアプリケーションクライアント
• 同じことを行うアプレット

このプログラム例のコンパイル方法と実行方法については、「Hello World の構築方法と実行方法」を参照してください。ソースコードも用意されています。

インタフェース定義 (Hello.idl)

次の OMG IDL は、文字列を返す sayHello() というオペレーションが 1 つだけ含まれた CORBA オブジェクトを記述したものです。

module HelloApp
{
    interface Hello
    {
        string sayHello();
    };
};

この IDL インタフェースは、次のコマンドでコンパイルします。

        idltojava  Hello.idl

_HelloImplBase.java

この abstract クラスは、CORBA の基本的な機能をサーバに追加するサーバスケルトンです。このクラスでは、Hello.java インタフェースが実装されています。サーバクラス HelloServant では、extends 節により _HelloImplBase を拡張しています。

_HelloStub.java

このクラスは、CORBA の機能をクライアントに追加するクライアントスタブです。このクラスでは、Hello.java インタフェースが実装されています。

Hello.java

このインタフェースには、上記の IDL インタフェースの Java 版が含まれています。このインタフェースには、sayHello() というメソッドが 1 つだけ含まれています。Hello.java インタフェースでも、extends 節により、標準的な CORBA オブジェクトの機能を提供する org.omg.CORBA.Object を拡張しています。

HelloHelper.java

この final クラスは、CORBA のオブジェクト参照を適切な型にキャストするのに必要な narrow() メソッドなど、補助的な機能を提供します。

HelloHolder.java

この final クラスには、Hello 型のパブリックなインスタンスメンバが含まれています。CORBA ではサポートされているが、Java のセマンティクスにマッピングするのが難しい out および inout の 2 つの引数の処理は、ここで行います。

ここで紹介するサーバは、サーバントとサーバの 2 つのクラスで構成されます。サーバントである HelloServant は、Hello IDL インタフェースの実装です。つまり、Hello の各インスタンスは、HelloServant のインスタンスにより実装されます。このサーバントは、idltojava コンパイラにより上記の IDL から生成される _HelloImplBase のサブクラスです。サーバントには、IDL のオペレーションごとに 1 つのメソッドが含まれます。この例では sayHello() メソッドだけが含まれます。サーバントメソッドは、Java の通常のメソッドと変わりはありません。引数や結果の整列化など、ORB 関連処理を行うコードは、サーバとスタブで実装します。

サーバクラスにはサーバの main() メソッドが含まれます。この main() メソッドでは、次の処理を行います。

• ORB のインスタンスを生成する
• サーバントのインスタンス (1 つの CORBA Hello オブジェクトの実装) を生成し、それを ORB に伝える
• 新しい CORBA オブジェクトをネーミングコンテキストに登録するため、CORBA オブジェクトのオブジェクト参照を取得する
• 新しいオブジェクトを「Hello」という名前でネーミングコンテキストに登録する
• 新しいオブジェクトが呼び出されるのを待つ

// Copyright and License 

import HelloApp.*;
import org.omg.CosNaming.*;
import org.omg.CosNaming.NamingContextPackage.*;
import org.omg.CORBA.*;
 
class HelloServant extends _HelloImplBase 
{
    public String sayHello()
    {
	return "¥nHello world !!¥n";
    }
}

 
public class HelloServer {
 
    public static void main(String args[])
    {
	try{
	    // create and initialize the ORB
	    ORB orb = ORB.init(args, null);
 
	    // create servant and register it with the ORB
	    HelloServant helloRef = new HelloServant();
	    orb.connect(helloRef);
 
	    // get the root naming context
	    org.omg.CORBA.Object objRef = 
		orb.resolve_initial_references("NameService");
	    NamingContext ncRef = NamingContextHelper.narrow(objRef);
 
	    // bind the Object Reference in Naming
	    NameComponent nc = new NameComponent("Hello", "");
	    NameComponent path[] = {nc};
	    ncRef.rebind(path, helloRef);
 
	    // wait for invocations from clients
            java.lang.Object sync = new java.lang.Object();
            synchronized (sync) {
                sync.wait();
            }
 
	} catch (Exception e) {
	    System.err.println("ERROR: " + e);
	    e.printStackTrace(System.out);
	}
    }
}
 

このアプリケーションクライアントでは、次の処理を行います。

• ORB を作成する
• ネーミングコンテキストへの参照を取得する
• ネーミングコンテキストから「Hello」を探し、その CORBA オブジェクトへの参照を受け取る
• オブジェクトの sayHello() オペレーションを呼び出し、結果を表示する

// Copyright and License 
 
import HelloApp.*;
import org.omg.CosNaming.*;
import org.omg.CORBA.*;
 
public class HelloClient 
{
    public static void main(String args[])
    {
	try{
	    // create and initialize the ORB
	    ORB orb = ORB.init(args, null);
 
            // get the root naming context
            org.omg.CORBA.Object objRef = orb.resolve_initial_references("NameService");
            NamingContext ncRef = NamingContextHelper.narrow(objRef);

            // resolve the Object Reference in Naming
            NameComponent nc = new NameComponent("Hello", "");
            NameComponent path[] = {nc};
            Hello helloRef = HelloHelper.narrow(ncRef.resolve(path));
 
	    // call the Hello server object and print results
	    String hello = helloRef.sayHello();
	    System.out.println(hello);
 
	} catch (Exception e) {
	    System.out.println("ERROR : " + e) ;
	    e.printStackTrace(System.out);
	}
    }
}

 

このアプレットクライアントでは、次の処理を行います。

• ORB を作成する
• ネーミングコンテキストへの参照を取得する
• ネーミングコンテキストから「Hello」を探し、その CORBA オブジェクトへの参照を受け取る
• オブジェクトの sayHello() オペレーションを呼び出し、結果を表示する

// Copyright and License 

import HelloApp.*;
import org.omg.CosNaming.*;
import org.omg.CosNaming.NamingContextPackage.*;
import org.omg.CORBA.*;
import java.awt.Graphics;
 
public class HelloApplet extends java.applet.Applet 
{
    public void init() {
	try {
	    // create and initialize the ORB
            ORB orb = ORB.init(this, null);

            // get the root naming context
            org.omg.CORBA.Object objRef = 
		        orb.resolve_initial_references("NameService");
            NamingContext ncRef = NamingContextHelper.narrow(objRef);

            // resolve the Object Reference in Naming
            NameComponent nc = new NameComponent("Hello", "");
            NameComponent path[] = {nc};
            Hello helloRef = HelloHelper.narrow(ncRef.resolve(path));

            // call the Hello server object and print results
            message = helloRef.sayHello();
 
	} catch (Exception e) {
	    System.out.println("HelloApplet exception: " + e.getMessage());
	    e.printStackTrace(System.out);
        }
    }
 

    public void paint(Graphics g) 
    {
	g.drawString(message, 25, 50);
    }
 
    String message = "";
}
 

このプログラム例のソースコードは、examples/hello ディレクトリにあります。以下の説明では、Java IDL ネームサーバ用にポート 1050 を使用できることを前提としています。必要であれば、別のポートに変更してください。なお、1024 以下のポートを使用する場合は、UNIX マシンであればスーパーユーザの権限が、Windows95 および NT であれば管理者の権限が必要です。また、以下の説明ではパス名でスラッシュ (/) を使用していますが、Windows95 および NT ではバックスラッシュ (¥) に置き換える必要があります。

注 : Hello World を構築し実行するには、idltojava が必要です。idltojava は、JDC (Java Developer Connection) Web ページから無償でダウンロードできます。このページにアクセスするには、JDC のメンバでなければなりません。JDC のメンバでない場合は、JDC に登録する必要があります。登録料は無料です。ダウンロードページは次のとおりです。

    http://developer.java.sun.com/developer/earlyAccess/jdk12/idltojava.html

• Hello.idl ファイルが置かれているディレクトリに移動します。

  	cd docs/guide/idl/examples/hello
  

• IDL ファイルに対して idltojava を実行し、スタブとスケルトンを作成します。
  注 : idltojava は、デフォルトのプリプロセッサを使用するようにハードコードされています。Windows マシンでは、MS Visual C++ のプリプロセッサが使用されます。Solaris マシンでは、/usr/ccs/lib/cpp からプリプロセッサが検索されます。idltojava が使用するプリプロセッサは、CPP と CPARGS の 2 つの環境変数を設定することで変更できます。CPP には、使用するプリプロセッサのフルパス名を設定します。CPARGS には、プリプロセッサに渡す完全な引数のリストを設定します。また、idltojava のコマンド行で -fno-cpp を指定することで、プリプロセッサを使用しないようにすることもできます。詳細については、idltojava コンパイラに付属のリファレンスページを参照してください。

  	idltojava  Hello.idl
  

• HelloApp ディレクトリにあるスタブとスケルトンも含め、.java ファイルをコンパイルします。

  	javac *.java HelloApp/*.java
  

• ネームサーバが動作していることを確認します。

  	tnameserv -ORBInitialPort 1050&
  

• Hello サーバを起動します。

  	java HelloServer -ORBInitialPort 1050
  

• サーバを起動したシェルとは別のシェルから Hello アプリケーションクライアントを実行します。

  	java HelloClient -ORBInitialPort 1050
  

• サーバを起動したシェルから、サーバのプロセスを終了します (サーバは、終了されるかマシンがシャットダウンされるまで、オペレーションが呼び出されるのを待ち続ける)。