IoTを活用した地域電力消費量 分析・告知システムの開発

本研究室では、スマートメータから得られるデータをリアルタイムで収集し、蓄積し、可視化するシステムを構築した。
この研究は競輪の補助を受けて実施した。
  1. はじめに
     スマートメータとLPWA通信機能を用いたリアルタイム情報通信技術を活用し、新しい宅内ネットワークを実現する。
     公共施設での電力消費量をスマートメータから、通信機器を経由して、自営光ケーブルを用いて集約することにより、従来よりも低コストでデータを収集可能となる。また、電力消費量のモニタリングと分析が可能になると、電力消費意識改革と省エネルギの推進が図られ、電気消費量削減と地域での「賢い電力利用の定着」が見込める。
     電力消費量データはスマートメータからBルートと呼ばれる方式で取得することは可能である。しかし、従来の方法では、Bルートから得られたデータは、専用機器と通じたインターネットへの接続が必要となる。
     公共施設には電力系統毎に複数のスマートメータがあるため、各メータから個々にインターネットへ接続する形態では費用対効果が期待できない。本研究では、通信コストを圧縮したスマートメータとの接続を実現し、データを送信できるデバイスを利用する。
     得られた電力消費量データは、自動入力インタフェース(自動入力I/F)を通じ、地域情報、気象情報、天気情報、イベント情報等データベースに蓄積される。また、公共施設の電力契約情報、建物性能情報、人員構成、行動情報、保有機器情報は手動入力インタフェース(手動入力I/F)により入力する。
     データ分析では、施設利用状況と電力消費量(機器利用)を機械学習等により分析することにより、各施設の利用パターンと電気料金の関係を把握する。季節や天候に応じた電力消費量を予測し、公共施設での賢い電力消費の啓蒙(省エネアドバイス)に取り組んだ。
  2. システム構成
    図1にシステム構成図を示す。また、図2に電力消費量分析システムの概要を示す。

    図1. システム全体像


    図2. 電力消費分析システム全体像

     また、システムの出力例を図3に示す。主幹電力消費量とアメダスデータ、室内温度湿度データから、冷暖房などの気温変化に連動して需要が変化することがわかる。さらに、庁舎がサービスを開始する8:00〜9:00までが電力使用量のピークとなる。エアコン稼働が影響しており、ピークを減らすことで、電力契約を減らすことが出来る可能性が高いと想定できる。

    図3. 本調査新館の電力消費量の需要変化

  3. まとめと今後の課題
     IoTデバイスを活用したシステムによって、公共施設だけでなく、一般家庭でも電力消費量の見える化を図れるようになり、建設企業・住宅メーカなどが付加価値を備えた建物建設や施設維持管理サービスを提供できるようになる。
     今後は地域での電力消費量削減と住民の意識改革含めた賢い電力利用を実践する。また、今後再生可能エネルギの普及やEV(電気自動車)、リニアモーターカ等電力需要の増加が懸念される。本事業での成果を地域で実現することにより、地域電力消費量のモニタリングによる賢い電力利用方法のヒントが生まれることが想定される。